手ごろなゼロゼロ物件の落とし穴

 「きれいな花ほど毒があるとはこういうことだったのかと思い知らされました」。 東京都練馬区に住む会社員の男性は苦々しげに語っていました。

07年4月、西武新宿駅近くに貼られていた不動産会社の広告が目に留まりました。 練馬区内のワンルームのハイツは、駅から徒歩10分で家賃5万7千円。 敷金・礼金も、保証人も要らない「ゼロぜろ物件」でした。 仕事のない日が多く、蓄えは不十分ですが、福島県で運送会社を営む父親には頼れない。 さっそく新宿区内の不動産会社で契約しました。

女性従業員はカウンター越しに「これを聞いて」とテープレコーダーの再生ボタンを押しました。 契約説明でした。 承諾書には、家賃を滞納すると1ケ月分の10%分と再利用料1万5千円を求めるとありました。「あれっ?」と思いましたが、当時は持病が悪化し、通院に便利な住宅を探していたという事情もあり、やむを得ずサインをしてしまいました。

翌月分の家賃の前払いや火災保険料などで、入居時に十数万円が貯金から飛んでいきました。 収入は時給千円の日雇いのコンビにエントストアへの派遣が週に4回しかなく、まもなく、手持ちは6万円を切ってしまいました。

9月分家賃の支払日8月28日、が迫ってきました。 しかし、家賃を払えば電気料が払えなくなってしまいます。 携帯電話は派遣会社から仕事を受ける唯一の手段だから手放すわけにはいきません。 迷ううちに家賃支払日が過ぎてしまったのです。

9月3日夜、帰宅すると鍵が空回りして開かないのです。 不動産会社に電話しても営業時間外のアナウンスが流れるだけで、連絡がつきません。 しかたがないのでまんが喫茶で一夜を過ごしました。 その後、テレビや冷蔵庫など家財が全て処分されてしまっていたのです。 1ケ月半、ネットカフェや友人宅を転々とする羽目になってしまいました。

消費生活センターが間に入り、昨年2月、口頭で謝罪した不動産会社から30万円を手渡されて和解したといいます。

東京では昨年7月以降、同様の被害を受けた借り主らが不動産会社を相手に損害賠償を求めて提訴するという出来事が多発しています。

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国民生活センターによると、賃貸アパート・マンションに関する相談は年に約3万2千件(07年度)ありました。 そのうち3割は2〜4月に集中するといいます。

進学や転勤などで賃貸アパート・マンション住まいをする人が増えてくる時期です。 入退去でトラブルに巻き込まれないためにはどんな点に注意したらいいのでしょうか、「失敗しないための賃貸借契約」を解説していきます。

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